雪に包まれる
PHOTO Yamada Tsutomu
雪国の冬は、3メートルもの雪が大地を覆う。
大量の雪を前にして、私たちは自然の力に向き合うことになる。
スマホひとつでなんでもできる現代に慣れた私たちは、
雪の中では人間はちっぽけな存在にすぎない、と思い知らされる。
圧倒的な自然の力への畏怖。しかし不思議なもので、
そうした気づきは案外心地がいいものだ。
私たちは雪を前にして生き物としての本質に出会うのかもしれない。
人は本来、自然に包まれるちっぽけな存在だった。
雪はそのことに気づかせてくれる。
そんな雪に、新たな可能性を見出す人々がいる。
そこから新たな雪のアクティビティも生まれ、
いま密かに人気になっているようだ。
PHOTO Yamada Tsutomu
雪の厳しさと楽しさを体験できる
スキー場での雪上キャンプ
越後妻有松之山温泉スノーパークは、スキー場でキャンプを楽しめる〝冬のアウトドアフィールド〟。2021年よりスタートしたのが雪上キャンプ場。ここで開設から携わっている松之山温泉スキー場の村山さんにお話を伺った。
「私どもはここから車で15分の大厳寺キャンプ場も管理していますが、関東の人から『冬でもキャンプがしたい。松之山温泉スキー場でもできないか』という声があり2018年冬にテスト的に雪上車で踏んであげたことがきっかけです」一晩に1メートルも降る雪の中でキャンプができるのか不安だったということだったが、そのようなお客様の声に押された形で開業したという。
「スキー場なので雪上車があり、雪の地ならしはお手の物でした。今ではユーチューバーさんなどの発信もあり多くの方がいらっしゃいます」驚いたのは同じ雪国の南魚沼、上越、柏崎といった近隣の新潟県のお客様も多いことだそうだ。
村山さんに雪上キャンプの魅力を聞いた。「まず、夏と違い虫がいない、汗をかかないことです。冬しか来ない人もいます。キャンプ系ユーチューバーの中には7〜8月はオフ、9月の過ごしやすい時期から活動する人もいるそうです。また、空気が澄んでいるから星空もきれいで、焚火の温かさや料理がよりおいしく感じられます。そしてこの松之山温泉スキー場のキャンプサイトに限って言えば駐車場や管理棟が近くにあるので非日常、自然の怖さを比較的安全に体感できることですね。車の中に避難することもできますし。雪は確かに降りますが、極端なマイナス以下にはならない気候も魅力です」
キャンプサイトはスキー場の脇にあり、スキーや様々なスノーアクティビティも楽しめる。また帰りに日本三大薬湯の松之山温泉に入ることができるので、キャンパーからは〝寒さが解凍されていく感覚を味わえる〟と人気である。
キャンプ系ユーチューバー
チキューギ・案内人のゆうさん(山崎 優さん)
「雪上キャンプは逆境を楽しめ!」
松之山温泉スノーパークともゆかりが深い人気のキャンプ系ユーチューバー、チキューギさんの雪上キャンプの魅力トークはYouTubeをご覧ださい。
https://www.youtube.com/watch?v=5oGlZiqXZoE
寝袋
断熱マットに冬用の寝袋は必需品です。雪上からの寒さをさらにしのぐには折り畳みベッドやエアマット等があると便利でしょう。もちろんダウンジャケット、暖パン、ニット帽などを着込んで。湯たんぽを活用する方もいらっしゃいます。
暖房器具
暖をとったり、調理もできたりする煙突付きの薪ストーブや灯油ストーブなども寒さがきつい雪上キャンプには必須です。最近ではカセット型のガスボンベを使えるストーブもあります。火災や一酸化炭素中毒に気をつけ、就寝時には火を消すことを忘れずに。
テント
様々なテントがありますが、世界でも類を見ない豪雪地である当地ではティピーと呼ばれるワンポール型のテントが良いでしょう。テント上に雪がたまりにくいです。ただし、降雪時にはテント周りの雪の排雪は欠かせません。
焚火台と薪
寒い雪の上こそ、焚火の温かさが身に染みるもの。ただ火を眺めたり、バーベキューを楽しんだり。
一酸化炭素計
雪上キャンプに一酸化炭素計は必須のアイテムです。一酸化炭素は、狭い空間で炭を燃やしたり石油ストーブを使うと酸素が不足することで発生します。一酸化炭素は無色無臭な上、就寝中に中毒に陥り危険な状態に陥ることもあります。必ず持参し、セットしておきましょう。もちろん換気も忘れずに。
他にも
◦ポータブル電源装置
◦ソリ/駐車場からテントまで
荷物を運ぶため。
◦スコップ/除雪のため。
翌朝駐車場の
車も雪に埋まっています。
… などがあると便利です。
十日町市/松之山温泉スキー場
新潟県十日町市
松之山天水島909番地
TEL.025-596-3133
http://www.matsunoyama-ski.com/
雪上キャンプに関する注意事項
安全に雪上キャンプを楽しむために、▲越後妻有松之山温泉スノーパークで雪上キャンプの管理をされている村山さんにお話を伺いました。
▪自己装備、自己責任で
雪上キャンプに必要な装備は全て持参してください。また、安全は個人で確保し、自己責任で行動をお願いいたします。
▪火の取扱い・一酸化炭素中毒に注意を
テントサイト等での火の利用は、必ずコンロや焚火台等を使用してください。 火の始末は各自で責任をもって行い、火災等を起こさないよう注意してください。必ず「一酸化炭素中毒チェッカー」をご持参いただき、確実なご使用を。また、テント内で火器を使用すると一酸化炭素中毒になる危険があります。
▪ゴミは全てお持ち帰りをお願いします
雪中雪上に炭ゴミやその他のゴミを放置しないようお願いします。
※燃えカスのみ引き受けしております。
▪雪の創作物は元通りの自然な姿に
雪のリビングスペース(テーブルや壁)、スノーランタン、雪だるま等を作っていただいて構いませんが、 お帰りの際は、必ず元の状態に戻してください。
▪こまめな除雪を
降雪状況をよく観察し、2〜3時間(多い時は1〜2時間)おきに雪かきやテントの状態確認を行って、安全を確保してください。 大雪の時は特にこの行動がとても大切です。※昼夜問わず、雪かき作業やテントのチェックを行い安全確保をお願いします。
にんじん特有のクセのある味もなく、フルーツの様に甘いとニンジン嫌いのお子様にも人気の「雪下にんじん」。
その雪下にんじん掘りの体験があるということで、新潟県津南町にあるニュー・グリーンピア津南の石橋昌子さんのところへ伺った。「そもそも雪下人参という品種はないんです。昔農家さんが秋の11月ごろに出荷しようと思っていたところ、大雪が降り掘り出せなくなりました。春になって〝あのにんじん、どっけんなったんだべ(どうなったのか)?〟と恐る恐る掘り出してみたところニンジンの匂いもしないし、みずみずしく、甘くてうまいと評判になったのが始まりです」とのこと。今では、わざと秋に収穫せず、雪の下で越冬させ、春に掘り起こしたものを「雪下にんじん」として出荷しているそうである。
甘く感じるのは糖度が増すのではなく、甘みや旨みを感じる遊離アミノ酸が増えるからだという。グリシンが6倍、セリンが4倍、アスパラギン酸が3倍、芳香成分のβカリオフィレンが13倍に急増し、青臭さが消え、リラックス効果や女性ホルモンのバランス安定に良いとのこと。しかもビタミンCの含有量は変わらず新鮮なままというから驚きだ。また、雪の下は温度が一定(0℃)状態のため凍らず、水分を多く蓄えているためみずみずしく、味はマイルドで甘く、香りがよく、歯切れの良い食感も楽しめる。
雪下にんじん掘り体験の様子を聞いてみた。「まず、その日に掘り出す地面を出すために除雪機で雪を掘ります。この辺は豪雪地なので春でも3mほどの積雪のこともあります。スタッフがスキで掘りやすくしたところを参加者に思い思いに掘ってもらいます。都会の人は雪や土に触れる体験が少ないのでみなさん楽しんでいらっしゃいますね」
小さなにんじんばかりを掘る人や大きめのにんじんを狙う人など様々な方がいるそうだ。
「もちろん、ホテルのレストランでもにんじんスティックやサラダ、ポトフなどでお客様に召し上がっていただきます。甘くて青臭さもないのでお子様には大人気ですね!」
石橋さんは「つなベジ会」という津南に来訪される観光客へ旬の美味しい津南の農産物を提供する会のメンバーである。メンバーには旅館や飲食店、お菓子屋さん、直売所、農家がいて、雪下にんじん以外でも、グリーンアスパラやスイートコーン、米と秋野菜などのフェアで地元津南の高原野菜の普及活動を行っている。
津南町/雪下にんじん掘り体験
▪期 間/2024年3月16日〜3月31日
▪参加費/2,000円 掘り出した人参1kg付
▪時 間/AM9:00(1時間程度 8:45までに集合)
▪要予約/前日の17時までにお電話でご予約ください(宿泊者以外でも可)。
*除雪車体験、今年もつなんランタン
打ち上げ体験を毎日開催いたします!
1月末まで/17:30〜
2月中/18:00~
3月中/18:30~
▪ニュー・グリーンピア津南
新潟県中魚沼郡津南町秋成12300
☎️025-765-4611
https://new-greenpia.com/
〝もぐら駅〟の愛称で呼ばれる上越線土合(どあい)駅。地上から約70m地下にある下り線のプラットホームへと続く486段もの階段を乗車客が登ったり下ったりしている様子が、「穴の中に潜っているもぐらのよう」と親しみを込めてこの愛称が名付けられました。2020年、そんな土合駅にカフェを併設したグランピングの宿泊施設・DOAI VILLAGEが誕生した。
「インスタントハウス」と呼ばれる宿泊施設は、モンゴルのゲルのような、不時着した宇宙船のような、ひょうきんさを感じさせる外観。それとは裏腹にその機能性は抜群で、特殊な素材により冬は暖かく夏は涼しい室内を保ち、一年を通して快適な宿泊をもたらしてくれる。手ぶらでも魅力的なキャンプを味わえる、非日常以上の体験ができるということで人気なキャンプサイトとなっている。
そのDOAI VILLAGEのもう一つの目玉が〝雪上サウナ〟。運営するVILLAGE INC.の大木陽平さんにその魅力を伺った。「サウナは北欧で盛んなこともあり、もともと雪とは相性がいいんです」フィンランドではサウナの後、湖に飛び込むが、土合では雪にダイブする。
「ここの雪はふわふわのパウダースノーです。熱々になったサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させるフィンランド式サウナに15分程度入ったあとは、思いっきりパウダースノーにダイブしてもらいます。その後はベンチで外気浴を楽しんで整えた後はまたサウナへ」と何回か繰り返すそうだ。DOAI VILLAGEでの雪の中でのグランピングも非日常だがさらに非日常感が味わえる。
「参加した方からは、雪は水より温度が低いから一気に体が締まる」と好評だ。若者はもちろん、家族連れにも好評だという。
みなかみ町/DOAI VILLAGE
〈日帰りサウナ〉
▪価 格/2,500円〜
(人数によって料金が異なります)
▪最小催行人数/1名様
▪定 員/各回最大4名様まで
▪予約締切/催行日の3日前まで
▪所要時間/2時間
▪集合時間/①10:00 ②12:30
▪集合場所/土合駅舎内 駅茶mogura
▪駐 車 場/駅前駐車スペース利用可
※豪雪時期は駐車スペースが限られます
▪申込はインターネットで
https://doaivillage.com/
▪JR上越線 土合駅
群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽218-2
☎️0278-25-8981