四季の山野草を描く水彩画ギャラリー「外山康雄 野の花館」
スノーカントリーフリーク2014春号の表紙は、水彩で描かれた山菜です。繊細なタッチで描かれたこごみは、芽に絡みつく産毛のような繊維の一本一本まで忠実に表現されています。作家は南魚沼市在住の水彩画家、外山康雄さん。山野草ばかりを書き続け、その数1,000点以上。伊勢丹をはじめとして各地で個展も開催され人気を博している作家です。
関越自動車道の塩沢石打I.C.から車で2分ほどのところに、外山さんの原画が常設展示された「外山康雄 野の花館」はあります。古民家を活かした落ち着いた佇まいの建物。入り口の大きなのれんをくぐり館内に入ると、原画が壁や棚を埋め尽くすように展示されていて圧巻です。
よく見ると、どの絵もすぐわきにモデルになった草花が飾られていますね。絵だけを飾るのではなく、あえて実際の草花と並べて展示しているのには、どんな意図があるのでしょう。
“最初は実物の花は置いていなかったんですが、たまたま描いたばかりの絵を、モデルの花と一緒に飾ったんですよ。そうしたらお客さんが「ほんとにそっくりに描くんだ」と言って喜んでくれて。
いつも絵だけ飾っていると、実際の花よりもキレイに描いていると思われちゃうんですね。でもそんなことはなくて、実際の花の方がキレイだと伝えたくて、モデルの花と一緒に飾るようにしたんです。”
外山さんが描くのは、華やかさを競い合うように栽培された花ではなく、野にひっそりと咲く山野草。日本の山に自生している山野草の魅力とは?
“日本の花は、地味なんだけれどもすごく雰囲気があるというか、宇宙があるんですよね、ちっちゃい花なんだけど。
不思議なもので、すぐそばに違う花が咲いていても花粉が混じり合うことはないでしょう?どんな小さい花でも自分の世界を持っている。それが素晴らしいと思うんですよね。”
山野草のか細い茎に咲く花の変化は想像以上に早い。人の体温だけでも花のカタチが変わってしまうそうです。例えば、スケッチの途中で食事をしに席を離れて戻ってくると花のカタチが変わっている。じゃあ写真にとって色を塗ればいいかというとそうもいかないそうで、実物を見ないと色が出ないんです、という。
“どんな花を描くときでも一生懸命描く。よく見て正確に描くというか、誠実に描くというか。ごまかさないようにしてね。”
野に咲く花に向き合う、外山さんの愛情が伝わってきますね。
やはり絵のモデルにする花は、外山さんご自身で山に入って探してくる?
“昔は、自分の足で山に出かけ描いていたんだけど、いまはみなさんが届けてくださる。何人かいらっしゃって、みなさん個性があってね、小さく育てている方もいるし、山仕事の帰りにひと枝届けてくださる。そういう人たちのおかげでね、実際の花と一緒に展示できているんです。”
「外山康雄 野の花館」は展示する絵が季節に合わせて変わります。やはり四季にはそれぞれの魅力があるそうで——。
“彩りが華やかなのは9月から10月。紅葉もあるし、緑もあるし、花もあるし、実もあるしね。色彩のインパクトがある。
冬は冬で、太平洋岸では12月の末になるとスイセンが咲き出す。そういう花を送ってくださる。
春は穏やかで儚い。3日もするともう消えていっちゃうでしょ。秋とは違う意味でとても素晴らしい。
夏の花だってね、すごく個性があるんですよ。芯のある花が多いですね。暑い中に咲いているんだから当然なんだけどもね。夏はすごく個性的な花が多いんですね。”
まるで季節ごとの野山を散策しているような気分が味わえる「外山康雄 野の花館」。リピーターが多いのもうなずけます。
館内ではお茶(コーヒー、紅茶、こぶ茶、玄米緑茶)のサービスもありますので、絵を鑑賞したあとに休憩できるのもうれしいですね。お花が好きな方は一見の価値あり、ですよ。ぜひ一度訪れてみてください。
入館料 300円
休館日 水曜日(祝日の場合は翌日木曜がお休みとなります)
新潟県南魚沼市万条新田371-1
tel:025-783-7787