雪国の春を撮る。おすすめ撮影スポットまとめ。
ついに雪国にも春がやってきました!残雪と桜、我先にと吹き出していく緑、待ってましたとばかりに動き出す人々。写真を好む人なら、どこを見渡しても広がる絶景に、休む間もなくシャッターを切っちゃうはず。雪国観光圏(※)の春は、まるで撮影スポットの宝庫です。
そんな数ある撮影スポットの中から、地元を知り尽くしたアマチュアカメラマン7名に、独自の視点で各市町村から1つだけピックアップして頂きました。素晴らしい写真とともに、撮影スポットの特徴や撮影の時期、おすすめの立ち寄り処などもご紹介していきます。
※雪国観光圏とは、雪国文化を共有する新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県みなかみ町、長野県栄村の3県7市町村にまたがる広域連携です。
群馬県みなかみ町
赤谷湖上流の「西川自然観察の森」周辺(※GOOGLEマップ 01)
Photo
松田 大介
Location
群馬県利根郡みなかみ町猿ヶ京赤谷湖
Access
<ローカル線>
JR上越新幹線 上毛高原駅 バスにて30分
JR上越線 後閑駅 バスにて30分、タクシー20分
<自動車>
新潟方面・東京方面ー関越自動車道 月夜野I.C.から国道17号線で25分
松田 大介:この写真は猿ヶ京にある赤谷(あかや)湖で4月下旬に撮影したものです。湖を取り巻く山々の木々や山桜に遅い雪が降り積もっている朝の景色です。春になると雪解け水が赤谷川や西川から豊富に赤谷湖に流れ込み、春の息吹を感じます。5月には湖面にロープが張られ、そこに集めた鯉のぼりをつるすんですよ。湖面にたなびく鯉のぼりの姿は壮観です。
他にもみなかみ町で春を感じるスポットは、たくさんあります。隠れたスポットはみなかみ駅の裏にある鹿野沢(かのさわ)の水芭蕉です。決して広くはないんですが、ひっそりと咲く水芭蕉は癒されます。駅の裏から歩いて行けます。あとは、秋の紅葉でも有名な藤原湖でしょうか。みなかみ町は広いので、地域により桜の開花時期も少しずつズレるんです。何度も桜が楽しめますから、観光客の皆さんには何度も足を運んでもらいたいですね。
私はカメラを始めてまだ5〜6年ですが、すっかりみなかみの自然とカメラにはまってしまいました。自然は二度と同じ表情を見せることがありません。同じ場所でも、年によって、季節によって、時間によって全く違う景色になるんです。雲の動きを見ていると、天気も予想がつきます。いい写真が撮れそうな雲の動きを見たら、すぐさま撮影に行くことができるのが地元に住んでいる良さですかね。
<おすすめ立ち寄り処>
姉山の家:100年以上前からある養蚕農家造りを改造した食堂。蕎麦や山菜のてんぷら、すいとんなどが食べられる。大自然に囲まれてゆっくりとした時間に浸りたい方にオススメ。
新潟県津南町
見倉集落(※GOOGLEマップ 02)
Photo
小林 幸一
Location
新潟県中魚沼郡津南町見倉
> カタクリ群生地(津南町見倉)
Access
<ローカル線>
JR越後湯沢駅下車し バスで湯沢駅前から44分で津南役場前 乗り換え津南役場前から29分で清水川原 下車後徒歩50分
<自動車>
東京方面ー塩沢石打I.C.からR353、R117、R405経由で約100分
新潟方面ー越後川口I.C.からR117、R405で約120分
小林 幸一:私が秋山郷の中で一番好きな場所、それが見倉です。たった4軒の小さな集落ですが、厳しい自然の中で助け合いながら暮らしています。近くには見倉のつり橋やカタクリの群生地、大栃の原生林などがあり、四季を通して通っています。
春になると春木山(はるきやま)と言って、山から薪材を下ろし一年中の薪をつくります。秋山郷の薪は長いんですよ。4尺(約120㎝)くらいの丸太を楔を使い巧く割るんです。それを人の背よりかなり高く積み上げる、これが秋山流です。豪雪に埋もれても、いざと言う時に掘り出せる知恵だと思うんですけど、町場じゃ絶対見られない光景です。
何処でもそうですが、やはり集落に入る時はマナーを守って欲しいですね。私も何年も通ってやっと人物が撮れるようになりました。
<おすすめ立ち寄り処>
かたくりの宿:小学校を改築した温泉宿に若い料理人が地元の食材を使って腕を振るう。食事は予約が必要だが、地元の人も感心する創作料理が味わえる、宿。
長野県栄村
野々海高原(※GOOGLEマップ 03)
Photo
関谷 美彦
Location
長野県下水内郡栄村大字北信中山峰国有林内
> 野々海高原
Access
<ローカル線>
JR越後湯沢駅下車し バスで湯沢駅前から70分で森宮野原駅前 下車後タクシーで30分
<自動車>
東京方面ー塩沢I.C.からR353、R117で約80分
新潟方面ー越後川口I.C.からR117で約95分
関谷 美彦:野々海高原には不思議な魅力があるんですよ。
写真の木は、道を上がっていったすぐ正面にあります。車で行けるようになるのは大体6月の半ばから下旬くらい。だからそのころまでは雪が残っています。今でも毎年7〜8mは雪が積もると言われているんです。
植物学的にも希少価値のある植物の宝庫だと聞きます。雪解け水が沢になって、雪をトンネル状に掘って、その中に水芭蕉が咲いてたり、絵にもなります。
午後3時過ぎくらいになると、霧がまいてくるんですよ。私は勝手に、「霧の摩周湖」になぞらえて「霧の野々海湖」と呼んでいます(笑)。
秋もまたいいんですよ。だから写真を好む人にとっては、素材に困らないところなんです。
秋山郷ももちろんいいですが、野々海の場合、あまり人に知られていないっていうのも魅力の一つかもしれませんね。
<おすすめ立ち寄り処>
北野天満温泉:北野天満宮のお膝元にある温泉。当日の朝に打ってふるまう、出来立ての手打ちそばも人気。近くにはカタクリの群生地なども。
新潟県湯沢町
荒戸城跡(※GOOGLEマップ 04)
Photo
高橋 正明
Location
新潟県南魚沼郡湯沢町大字三俣
> 荒戸城跡
Access
<ローカル線>
JR上越新幹線・上越線 越後湯沢駅 バスで約20分(芝原バス停より徒歩約60分)
<自動車>
新潟方面・東京方面ー関越自動車道湯沢I.C.から10分
高橋 正明:荒戸城は別名荒砥城とも呼ばれ、1578年(天正6年)御館の乱の際に、北条氏の侵入を阻止するために上杉景勝が築城した城です。国道17号線の芝原トンネルから登山道が整備されています。駐車場からお城まで徒歩15分くらいですので、軽快な春のハイキングが楽しめます。二の丸、三の丸や空堀といった当時の城跡が残っているのも魅力ですが、春はブナ林に覆われ、景色、植物とも豊富です。
湯沢の春はぜひ、水辺に足を運んでもらいたいですね。春一番はキクザキイチゲ、次にフキノトウ、そしてカタクリと順番に美しい花を咲かせます。フキノトウは食べるだけでなく、その花の美しさも見てもらいたいですね(笑)。この地域にはほんといろいろな野草があり、木々の枝先や足元の小さな草花にもぜひ注意して観察してもらいたいです。ずっといたくなりますから。
<おすすめ立ち寄り処>
湯沢町内温泉:登山やハイキングの後の楽しみといえば、なんといっても温泉。湯沢町は町営の日帰り温泉から、JR越後湯沢駅構内にもある。旅館やホテルも日帰り温泉として開放してあるところもある。
新潟県魚沼市
駒ノ湯温泉付近(※GOOGLEマップ 05)
Photo
星 義廣
Location
> 駒の湯温泉
Access
<ローカル線>
JR上越線小出駅下車南越後観光バス 大湯温泉又は見返橋下車後徒歩25分
<自動車>
新潟方面・東京方面ー小出I.C.を出て国道352号線より分岐
星 義廣:山登りが好きで20数年日本全国いろいろな山を登ってきました。その山登りをしながら、感動した風景などを撮り始めたのが、写真を始めたきっかけです。山登りの最中は撮影は無理ですが、朝や夕暮れなど時間がある時に撮影したものです。
ここ魚沼の春はどこも素晴らしいですが、この写真は駒ノ湯温泉の手前から越後駒ヶ岳を撮影した写真です。裾野に新緑、山の頂に残雪というコントラストは雪国ならではの春をひときわ感じさせる風景です。
また、尾瀬もおススメです。そうそう、奥只見ダムから尾瀬口へ向かう定期船が出ているんですが、船上から見る新緑が切り立った岩肌とのコントラスが最高ですね。
気軽に楽しみたい方は、入広瀬の大白川からエコミュージアムへ向かう道路のドライブもいいかもしれません。新緑のブナ林や山桜に出会えるでしょう。
<おすすめ立ち寄り処>
奥只見湖:貯水量6億立方メートルを誇る巨大な人造湖は、5月下旬から11月上旬まで湖上遊覧を楽しみむことができる。新緑の季節から秋の紅葉シーズンまで山々を湖面に映しだす景観を船上からゆっくり楽しめる。
新潟県南魚沼市
六万騎山(※GOOGLEマップ 06)
Photo
若井 健一
Location
新潟県南魚沼市麓
> カタクリ群生地(六万騎山)
Access
<ローカル線>
JR越後湯沢駅から21分でJR六日町駅で下車。バスで六日町駅から23分で麓バス停登山道入口まで徒歩5分
<自動車>
東京方面ー六日町I.C.から15分(7㎞)
新潟方面ー大和スマートI.C.から20分
若井 健一:六万騎山は標高321メートルで、戦国時代山城でした。20分もあれば山頂に登れますが、三国連峰や魚沼盆地などを見渡せます。1周1時間の階段状に整備された山道は気軽にトレッキングが楽しめます。特に春は山一面がカタクリに覆われますが、他にもショウジョウバカマ、イワカガミ、イカリ草、各種のスミレなどいろいろな花が咲き誇ります。
私の住んでいる南魚沼市には八海山、坂戸山、巻機山、金城山など多くの山々がありますが、標高の高い越後三山には残雪が長く残り、春には長くその美しい姿を眺めることができます。
<おすすめ立ち寄り処>
魚沼の里:銘酒「八海山」の蔵元である八海醸造が運営する観光施設。酒蔵やお土産物店、飲食店などがある。冬の間の雪を貯蔵した雪室は雪中貯蔵した清酒の様子も見学できる。
新潟県十日町市
飯山線と桜(※GOOGLEマップ 07)
Photo
太田 重敏
Location
新潟県十日町市下河原町西保育園近く
Access
<ローカル線>
JR十日町駅東口より徒歩15分
<自動車>
道の駅クロステンより徒歩7分
太田 重敏:十日町の桜を撮るのは難しいんです。雪で枝が折れたり、ウソと呼ばれる鳥が桜の花を食べたりと、桜の花がきれいに咲いている姿を探すのは大変です。その中でも私の家の近くの千手小学校の桜はきれいに咲きます。また、桜ではないのですが、松之山の美人林のブナ林も春の撮影スポットですね。桜を撮影するときには逆光で撮ることにより枝をわざと黒くして、その分花の白さを引きだすように工夫したりします。
私は撮影するときには表現したいポイントを決めたり、全体の構図を決めてから撮影をします。この写真は地元を走るローカル線である飯山線と西保育園近くの桜という構図を決めてから撮影しました。旅行者の方には、飯山線に乗って雪国の春をのんびりと車窓から眺めながら旅してもらいたいですね。それとこの地域はお祭りやイベントもたくさんあります。被写体には困らないんです。
<おすすめ立ち寄り処>
道の駅クロステン:撮影場所近くの「道の駅クロステン」は、十日町の観光拠点。情報コーナーや土産物店、きものの小物を販売するお店や飲食店がある。隣接するキナーレには日帰り温泉や里山現代美術館もある。
雪国観光圏には他にも撮影スポットがいっぱい。さあみなさん、春を撮りに雪国へ出かけませんか。
※ 01 赤谷湖上流の「西川自然観察の森」周辺/02 見倉集落/03 野々海高原/04 荒戸城跡/05 駒ノ湯温泉付近/06 六万騎山/07 飯山線と桜