<雪国の保存食特集>保存名人に聞く雪国の保存方法
真冬での食料調達が今よりずっと難しかった時代、雪国で生まれ、育まれていった多種多様な保存食たち。豊かになったこの現代においても、それら保存食を昔ながらの方法で数多く作り続けている人物がいる。“保存名人”に雪国の保存方法を伺った。
「ここ松代は日本有数の豪雪地で、今からほんの40年前までは冬は陸の孤島で、ここに暮らす人々は初雪から雪消えまでの半年間保存食で過ごしていたもんだ。」と語るのは東部タクシー社長の村山達三さん。タクシー業の傍ら観光乗合タクシーを主催し、地元の里山の散策に親しむ名所周遊コースの道先案内人としても活躍している。
また、村山さんはNPO法人ほくほく村理事兼事務局長として毎年「自然を食う会」を主催している。そこでは、松代の山々で採れた野山の食材を地元の方々と料理をして食べている。「雪国では、一年中“冬”を意識して生活している。春採れる山菜は春に保存、秋採れるきのこは秋に保存する。旬の時期は食べきれないほど採れるのでそれを保存するわけだ。無駄がないし、何よりそれによって長い冬に備えてきたんだ。」
山のどこに何が生えているかすべてわかるという村山さんは自宅隣の倉庫で、採取した山菜や木の実を昔ながらの保存方法で保存している。「昔は、食べるものと言えば、野山や田畑で採れるものばかりだった。肉は盆と正月にしか口に入らず、それも家で飼っている鶏や兎で、ほとんど植物性の食べ物で生活していた。」
今でも、塩漬けをすれば腐らずに長く持つという。昔の人はよく考えたものだと思う。防腐剤も使わないわけだから体にも良さそうだ。雪国観光圏(※)に来て、食事をする時はぜひ雪国の知恵も一緒に味わってもらいたい。
※雪国観光圏とは、雪国文化を共有する新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町、十日町市、津南町、群馬県みなかみ町、長野県栄村の3県7市町村にまたがる広域連携です。
村山さん宅の保存食をほんの一部ご紹介
ムキタケ[ビン詰]
カタハとも呼ばれ、当地ではよくけんちん汁として利用。
ヒラダケ[ビン詰]
味にも香りにも癖がなく、汁物、鍋物、炊き込みご飯などさまざまな料理に利用できる。
ヒメダケ[ビン詰]
当地の春のごちそう。焼いたり、汁物に入れたり利用範囲は広い。
ゼンマイ[乾燥]
春に採ったものを乾燥させる。煮物などにして食べる。正月などに食べる、昔は特別な食材だった。
ウルイ[乾燥]
オオバギボウシの若葉のことをウルイと呼び、山菜として賞味されている。
トコロ[乾燥]
自然薯に似ているが、堅い。胃腸に効くとされ当地の女性はよく食べる。
ウワバミソウ[塩漬け]
大蛇(ウワバミ)の住みそうな所に生えている草。茎の部分をおひたし、和え物、炒め物、煮物、汁物などに利用される。
深山イラクサ[塩漬け]
採取した若い茎を、煮物に、おひたしなどに利用する。
マタタビ酒[酒]
疲れ切った旅人が、マタタビの実を食べて、元気になったと言ういわれがあり、疲労回復に良いとされている。
トコロ酒[酒]
トコロは根が老人の髭のように見えるところから、野老(トコロ)の名になったという。
オニグルミ[現物・冷凍]
殻が非常に堅いクルミ。そのまま食べたり、お菓子にしたり、クルミ味噌として食べたりもする。
ヤマボウシ[現物・冷凍]
果実は秋に赤く熟し、甘いので食用になる。果実酒にも利用。
村山 達三(むらやま たつぞう)
十日町市松代在住。東部タクシー代表取締役。タクシー業の傍ら観光乗合タクシーを主催し、里山の散策に親しむ名所周遊コースの道先案内人として活躍。松代町観光協会理事、にいがた観光カリスマ、フリーマーケット愛の風代表世話人等。